第十一話:空中ブランコ
このところ、ひとりごとがストップしてしまった。
この間に実に多くの方々から「次はいつ?」と激励をもらう。ずっと更新しないこのページにアクセスしてくれた人がたくさんにることに感謝。
昨日は愛媛で愛媛県教育委員会、NTT西日本、D-project共催の高等学校教科「情報」の研修。ぎりぎりのところで金沢に戻って(羽田経由)くる。今日は朝から集中講義だ。あぶないあぶない。
さて、今日は最近読んだ中でのイチ押しの本の紹介。
奥田英朗の「空中ブランコ」だ。直木賞受賞作なので、読まれた方もいらっしゃるのでは?
主人公は伊良部という精神科医。とにかく破天荒で精神状態ぎりぎりのところで駆け込んだ患者(本書では5作なので、5人)に対して、実にお気楽に対応する。その対応に驚き不快感をあらわにする患者。おまけに相手が苦しんでいる内容に果敢に(?)挑戦し、楽しんでしまう。さらに抵抗を続ける患者。しかし、状況はさらに悪化し、また伊良部先生のところへ足を運んでしまう。そうこうしているうちに、いつのまにか自分の空回りを自覚し始める患者達。読んでいるうちに、結局、こういう治療が最良であると思わせてしまう。
伊良部先生のような生き方にはあこがれすら感じる。
まっしぐらに解決の糸口を探し、正面突破もいいが、まったく別の視点からのアプローチを模索することも、教育現場では必要だ。もっとも、模索などという行為自体が伊良部先生の辞書にはないだろうな。
無表情に注射をする(どんな症状でも)看護婦マユミちゃんの存在も秀逸。
ただ、本当に秀逸なのは、文章のうまさ。端的な表現である上に、繰り返しをうまく使っている。参考にしたい作家の一人だ。
なお、収められている作品は
「空中ブランコ」「ハリネズミ」「義父のヅラ」「ホットコーナー」「女流作家」の5作。
オススメの本が教育書じゃなくてごめんなさい。でも、私は読む本の半分近くは、いわゆる教育書ではありません。
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奥田英朗/著、文芸春秋、2004年4月発行
1,300円(税込)