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2004年09月 アーカイブ

2004年09月07日

第十一話:空中ブランコ

このところ、ひとりごとがストップしてしまった。

この間に実に多くの方々から「次はいつ?」と激励をもらう。ずっと更新しないこのページにアクセスしてくれた人がたくさんにることに感謝。

昨日は愛媛で愛媛県教育委員会、NTT西日本、D-project共催の高等学校教科「情報」の研修。ぎりぎりのところで金沢に戻って(羽田経由)くる。今日は朝から集中講義だ。あぶないあぶない。



さて、今日は最近読んだ中でのイチ押しの本の紹介。

奥田英朗の「空中ブランコ」だ。直木賞受賞作なので、読まれた方もいらっしゃるのでは?

主人公は伊良部という精神科医。とにかく破天荒で精神状態ぎりぎりのところで駆け込んだ患者(本書では5作なので、5人)に対して、実にお気楽に対応する。その対応に驚き不快感をあらわにする患者。おまけに相手が苦しんでいる内容に果敢に(?)挑戦し、楽しんでしまう。さらに抵抗を続ける患者。しかし、状況はさらに悪化し、また伊良部先生のところへ足を運んでしまう。そうこうしているうちに、いつのまにか自分の空回りを自覚し始める患者達。読んでいるうちに、結局、こういう治療が最良であると思わせてしまう。

伊良部先生のような生き方にはあこがれすら感じる。

まっしぐらに解決の糸口を探し、正面突破もいいが、まったく別の視点からのアプローチを模索することも、教育現場では必要だ。もっとも、模索などという行為自体が伊良部先生の辞書にはないだろうな。

無表情に注射をする(どんな症状でも)看護婦マユミちゃんの存在も秀逸。



ただ、本当に秀逸なのは、文章のうまさ。端的な表現である上に、繰り返しをうまく使っている。参考にしたい作家の一人だ。



なお、収められている作品は

「空中ブランコ」「ハリネズミ」「義父のヅラ」「ホットコーナー」「女流作家」の5作。

オススメの本が教育書じゃなくてごめんなさい。でも、私は読む本の半分近くは、いわゆる教育書ではありません。

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奥田英朗/著、文芸春秋、2004年4月発行

1,300円(税込)

2004年09月13日

第十二話:教育現場のIT活用を阻害するものは

先週末は、新しいプロジェクトや研究の構想・企画が続いた。情報モラル関連、IP電話、ネット対応ディスプレイ活用、研修システムに関するものだ。どう展開していくか関係者とひざを突き合わせて考えるこのひとときは何事にもかえがたい。今後の展開が楽しみなものばかりだ。こういう機会がたくさん得られることは本当に幸せだと思う。



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上記のプロジェクトにもからむが、私がかかえているプロジェクトのうちのいくつか(というかほとんど)は、その市町村を越えて、他の市町村の学校や専門機関、専門家との情報通信ネットワークを活用してのコラボレーションが想定されている。でも、これがなかなかままならない。ポートをあけたり、他地域との交流のためにテレビ会議システムや掲示板を使うこと自体、何度も交渉を繰り返さなければGOが出ない。いや、出れば良い方で、例え管理職が細かく説明しても結局NGになり、交流を断念せざるをえないケース(地域、学校)も多々ある。



環境自体は回線がINSからケーブルや光になり、はるかに速くなってきているし、コンピュータ室だけでなく教室にもどんどんネットワーク対応のコンピュータが設置されつつある。しかし、現状を見ていると、インターネット環境が物理的によくなっていくとそれと反比例するようにこれまでちょっとでもできていたことができなくなって(制限されて)いるように思うのは私だけだろうか?



やる気があるのに思うようにできない全国の現場の教師から以下のような声をもらっている。

・地域のインターネット運用について、これまでの教育委員会直接担当から外部の会社委託になったために、これまで各学校個別対応してくれていたことがすべてNGになった。

・コンテンツの開発も行っており,よい教材もたくさんあるが、市外の学校からは、活用できない。何故使わせないのかと聞いたところ「うちの市がたくさんのお金を使って開発しているのだから,他の市町村に使わせるのは抵抗がある。」と返事をされた。

・地域サーバのフィルターがホワイトリスト方式(委員会のお眼鏡にかなったサイトのみ学校で閲覧ができる)のため,限られたコンテンツでしか調べ学習を行えない。また,検索の際jpeg画像にフィルターがかかる。

・教育委員会以外が主催している情報教育の研究会の案内などを出すことを断られた。「そのような会に町内の教師が参加したことでネットワーク等でいろいろな活用をができることを知り,やりたいと言い出したら困る」という理由のようだ。



もちろん、私が知っている多くの都道府県市町村の担当者(指導主事など)は、学校現場でのIT活用が広がるように、環境整備はもとより、IT活用の授業アドバイスまでも根気強く、積極的かつ熱意をもってやっておられる。私も元は教育委員会でそのような担当をしてきたので、理解をしてくれないわけのわからぬ行政職の上司を説得するのがいかに大変かわかっているつもりだ。

でも一方で、せっかく前向きに活用してようとする教師に冷や水をあびせるような事なかれ主義の担当者も少なくない。



すぐには変わらないこともあるだろう。しかし、文句だけ言っていても始まらない。やるべきことをやり、こういう授業をこんなふうにやりたいというイメージ(ゴール)を持ち続けることが大事だと思う。それが不十分だとしても、できる環境の中で実績を残していくことが何よりの説得材料になることはまちがいない。

また、状況がカイゼンするための情報交換ももっと積極的に進める必要がありそうだ。それぞれの立場でできることはまだまだあるのではないかと思う。

2004年09月20日

第十三話:フィンランド滞在記

水曜日(15日)から実に短期だが、19日までフィンランドに行ってきた。わずか現地では正味3日間の滞在だ。前後が詰まっていて、どうしようもなかった。目的は、現在のメイン研究対象の1つである教育でのモバイル環境の調査だ。東大チーム(山内さん@東大、宇治橋さん@NHK、中原君@MIME、真川さん&中野さん@ベネッセ)と15日に合流。中原君はボストンからの合流らしい。こちらかは小林を同行させた。

この時期のフィンランドは寒いと思っていたが、想像以上に寒かった。ジャケットの他に、もう1枚長そでをもっていって本当に良かった。ヘルシンキのみの滞在となったが、港町でこじんまりとしていてとても過ごしやすい町だ。港ではたくさんの屋台が毎日出ていて、のぞいてみるだけで楽しい(写真:左)。さすが北欧の国だけあって、町の建物や家具まであやゆるもののデザインが秀逸。写真中の上はノキア本社のロビー。庭?はクルーザー乗り場になっている。また、ホテルの部屋もシンプルで過ごしやすかった(写真:中)。



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さて、今回の訪問先は2つ。

1つは、ヘルシンキ美術デザイン大学のメディアラボ10周年記念シンポへの参加だ。研究室日記にもあるが、12月のICCEで発表を控えている小林にメディアラボの教授に対して研究内容の説明を指示(写真:右上)。次の日のノキアでのプレゼン(こちらの方は1日目より落ち着いてプレゼンができていた)も含め、12月の良い経験になったと思う。そのための今回の同行なので。

さて、メディアラボ10周年記念シンポだが、内容はもとよりとても興味深かったのがシンポの構成だ。基本は司会1人とシンポジスト3人が舞台にあがり、デジタルシティズンのあり方などのテーマにそってセッションが行われる。その後、質問の時間は設けず、すぐ横の会場でセッションごとの場所があり、登壇した4人がそこに控えている。質問したい人はそれぞれのブースに行き、自由に意見交換を行う、という仕組みだ(写真:右下)。この形式は参加者のことを考えるととてもおもしろい。ただ、聞きっぱなしにならないからだ。どこかでアレンジして参考にしたいと強く思った。

次の日はノキア本社。3人の方とお会いした。残念ながら教育の専門の担当の方ではなかったが、どうやら携帯の教育活用は進んでいない。前日のメディアラボの研究者が家庭でも使えそうなiアプリをいくつか開発しているくらいだった。そういう意味では、「今やれることをどんどん日本でやっていこう!」と、山内さんと確認できたことが大きい。話の内容としては、最初にお会いしたRitta
Uanska氏は企業向けのe-ラーニングトレーニングプログラムを作っていて、これにコミュニケーションやサポートの場をネットワークやモバイル環境を使って行っていく場を実験的に試行している、ということらしい。この件は、教員研修マネージメントに関するe-ラーニングの場を構築していくことを中川塾や大学の仕事の1つにしつつある私にとっては今後参考にしたい取り組みだ。

今回の訪問については、誘ってくれた山内さん、アレンジしてくれた宇治橋さんに感謝。




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