第五十四話:校内情報担当リーダとしての役割(三朝町立西小編)
今週は、24校の私が定期的に入っている学校の中でも、倉吉東中、三朝西小という鳥取を代表する2つの情報教育推進研究校に連日行くことに。金沢を朝の4時に出発。11時には東中に到着。4,5時間目で7クラスの授業を参観する。いつ来て見てもすべての教師の授業力が高い。放課後は、研究リーダーの岩崎教諭の企み(?)で、数学の教諭の授業発表とそのカイゼン提案を全教員でワークショップ形式で行う。こうやって、中学校であるにもかかわらず教科を超えて研究会を持てることができそうでできない。
次の日、鳥取県の三朝町立西小学校の授業公開研究会があった。
県の情報教育の指定校としての公開だったが、「プレゼンテーション」「メディアリテラシー」「情報モラル」を3つの柱として、全学年公開した。
情報教育の研究会というと、ともすると、IT機器ばかりが目立つ公開も少なくないが、この学校はITの活用はまくまでも日常の域を出ないで、授業提案そのものがしっかりとしていた。特に、私が常々主張している「デジタルとアナログの融合」が見事に実現されていた姿が印象的だった。
また、その後のパネルも実践者、コーディネータ、地域の研究推進の立場から、石倉さん、谷田さん、谷口さん、田中さん、入江さんが短い時間にうまくまとめていた。
これだけの成果をなぜあげられたかということについては、いろいろ考えられるが、何といっても情報リーダの田中靖浩さんの存在が大きい。
彼のここまでの集大成が参加者にたくさんのおみやげをもたらしたと言っても過言ではない。
では、田中さんはどんな資質を持ち、何をやってきたのか。
その1:環境の整備
現任校(西小)に来て田中教諭がまず行ったのが、環境整備だ。校内(町内)のシステムについて積極的に意見を言える立場に就き、ネットワーク整備をはじめ、管理者にとっても、使用者(教師・子ども)にとっても「安心、安全、いつでも、どこでも」の環境を作り上げた。また、当時機器が使われていない状況からデジタルカメラを全教室に配布したという。
その2:情報収集、現状把握
「ITをどんどん活用してください」と同僚によびかけるのは誰でもできる。しかし、よびかけただけでは動かないのが世の常だ。そこで、田中教諭は「何をしたいのかまず聞き(状況把握)、それに合わせた具体的なアドバイス」を行っているという。また、デジタルコンテンツなど、授業で使えるものについての情報収集を欠かさない。それがまたニーズに合わせてすぐに対応できるコツだといえる。
その3:迅速な対応
情報リーダに話を聞いて必ずあげるのがこの「迅速な対応」だ。聞かれたときに答えなければ、つまり時期を逸したらもう聞かないという場合がIT活用ビギナー教師には少なくない。これを承知している情報リーダは絶対にその機会を逃しはしない。
その4:トップダウン的なふるまい
今回、西小では、情報教育の公開授業あった。これを全学年公開にした上に、授業終了後の全体会で2クラスあるもう1つのクラス担任による実践の取り組みのポスター発表があった。つまり、ほぼ全員が発表するはめになっていた。また、IT活用に消極的な教師には特定の機器の教室配置などを半強制的に行っている。また、使える人には授業活用としての負荷をかけていたように見受けた。このことにより、結果的に全員が日曜的に使う素地が出来たのではないか。
その5:授業を見る眼
ただ単にITを活用すれば良いという時代は過ぎた。授業論をきちんと示せなければ参観者の目は肥えてきている。何が良い授業なのか、何はダメなのか、そのへんの見極めがきちんとできていることが実は一番重要な要素だ。ここがぶれてしまっては、せっかくの教師集団のモチベーションもちがう方向にむかってしまう。
いずれにしても、「負荷をかけたり、励ましたり」「授業そのものの意図や流れについて考えたり、IT活用の場面を想定したり」というバランス感覚こそがすぐれた情報担当リーダに必ず求められているのはまちがいない。