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2006年11月 アーカイブ

2006年11月16日

第八十一話:School Of The Future World Summit

えらくひさしぶりの更新になってしまった。書くことはいっぱいあるのに。。



フィラデルフィアで行われたSchool Of The Future World
Summitに参加した。マイクロソフトと連携してプロジェクト等を行っている政府関係者、NPO、教育委員会、教員等が集まってのサミットだ。今回は48カ国が参加した。日本からは清水先生@NIME以下、7名が参加。私にとっては、客員を勤めているNIMEの主担当プロジェクトであるNEXTの初仕事でもある。メンバーはとてもアクティブで一緒にいて楽しい。

テーマは未来の教室だが、主に、その環境の有効性を含めたビジョンについて、各国の取り組みを講演、パネル、ディスカッションの形でプレゼンする。途中にアクティブなセッション等が仕組まれており、カリキュラムについて、自国以外の人をみつけて討論するなど、だ。我々はインドネシア、マレーシアチームとセッション。

今回、日本チームは、フォーマルな発表はなかったが、エントリーしているNEXTプロジェクトの提案が通ると、私が来年発表することになるようだ。

今回、各国の取り組みで話によく出てくることが「フレキシブルな環境の実現」だ。たとえば、タブレットPCの活用をどのように学習にむすびつけるのか、机などの可動式の教室でどのように効果をあげるか、など。考え方も、ICT環境の話もさることながら、批判的な思考をどのようにつけるか、児童・生徒のモチベーションをどのようにあげるか、コラボレーションが成立するためのプロジェクト学習のあり方などがいみじくもどの国の発表からも聞かれた。School
Of The Futureは、インフラの話から学習環境そのものやカリキュラム、授業方法へ、ということだろうと思う。



滝田さん@マイクロソフトには特にいろいろと世話になった。ホテルも快適だった。



1:3日間のスケジュール。朝から夕方までびっちりだ。

2:MSの教育担当のトップであるLindsay Sparkの基調講演。

3:MSの技術担当Bill Buxtonの未来の黒板に関する講演。

4:講演の後は、必ずQ&Aの時間がとられている。

5:1日目の夜は韓国チームと一献。

6:日本チームは朝から仕事モード。

7:シンガポールの2015年までのビジョン。実に明快だ。




2006年11月19日

第八十二話:たかが校舎されど校舎

そういえば、School Of The Future World Summitの会場になっているところが、フィラデルフィア郊外の高等学校だ。この9月に開校したばかりの高校で、なんと学校名が『School Of The Future』そのもの!

こんな学校名をつけるところがアメリカらしい。



フィラデルフィア教育区では、40年ぶりの学校の開校となった。総工費は約75億円。2003年から開校のための準備がはじまっていた。

マイクロソフトはお金を出している訳ではないが、人的サポート、特にどうやって教員を雇うか、どのような考え方で学校経営を進めるか、望ましい学習環境はどのようなものか等、どんな学校を創るかそものものについてのコンサルタントとして積極的に関わっているようである。特に、この地域に通う予定の生徒達の特性を事前に分析してそれを学校創りに反映させるべく教育委員会や準備委員会に積極的に提言を行ってきたようだ。例えば、モチベーションやリーダーシップがもっと持てるようなカリキュラムの提案や生徒同士が討論できるような教室内の工夫(統べ絵tの教室の机がすぎにセッションでききるように可動式になっている、など)を実現してきている。

この学校はある意味で、マイクロソフトがコンサルタントを行って学校設立のパートナーとして関わる実験的な取り組みである。この試みが成功すれば、他の地域に展開できることを目標としている。

また、マイクロソフトUSの社内で活用している部署ごとのスキルチェックシートを今回教員向けにカスタマイズし、活用しているようだ。このチェックにより、個々の教師の弱点を研修等で個別に補っていくらしい。

教員は一人1台のPCを持っており、校務等では特に紙のテキストでの配付等はない(つまりすべてデジタルデータのやりとり)でまかなっている。もっともこの件(校務の情報化)については、最近日本でも、地域によっては積極的に進められようとしている。

この高校は4学年あり、生徒一人ひとりにも学校からPCが入学と同時に貸与される。一応、卒業に返却のようだが、どうも聞いているとそのまま返却なしということになる可能性が高いようだ(まだ1年生しかいないので、あくまでも可能性の話だが)。ちなみに、一学年は170名。生徒はPCを家にも持って帰るらしく、地域のフリーアクセスポイントがあり、ネットにアクセスすることに関しての家庭での負担はない。

もちろん、校内は無線LAN完備でどこからでもアクセス可になっている。残念ながら、サミット会期中は学校が休みで、授業の様子は見れなかったし、情報担当の教師から直接話が聞けなかったのが残念だが、生徒達はビデオの様子からすると、毎日の授業中で自分のノートPCはよく使っている。



さて、そんな中でも特筆すべきことが2つある。1つは企業が学校創りのコンサルタントとして参加していることだ。日本では、あくまでも学校が主体で、企業がそのほんの一部(たとえば機器の提供)をサポートする例はたくさんある。また、企業が出資して学校を設立する例もある。つまりはこのどちらかに偏ってしまう。学校設立のパートナーとして、ある意味対等な立場で関わる例はほとんどないように思う。今後、企業がお金や機材を出すのではなく、人やノウハウを出しながら、学校経営に関わるという試みがもっと行われてもいいように思う。

もう1つは学習環境として校舎の設計の重要性だ。学校はどんなに設計がすばらしくても、実際に教師と子どもたちが過ごしやすく、学習効果が上がってなんぼのものである。すばらしい学校の環境というハード面にどのようなソフト面(学校の方針はもちろんのこと、カリキュラム、授業方法の工夫、教師の意識・力量、授業に使われるコンテンツなど)が持ち込まれるかで、良くも悪くもなるのは当然のことだ。ただ、学習環境がたとえば教師の意識や子どもたちの行動にに大きな影響を及ぼすことは私の経験からもわかっている。また、これまでのデータで、全米の学校の出席率が63%なのに対し、この学校では93%。試験を受けに来る率は、全米平均70%に対し、この学校では100%だそうだ。

いずれにしても、この数値は、今後の数年間がどうなのかが問われるところではあるが。



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1:普通教室。机はさまざまな形がある。

2:どの教室にも天釣りプロジェクター&インタラクティブボードが完備されている。

3:ランチルーム。円形で実にオシャレ。朝早く来る生徒もいてここで自習等をするようだ。そういえば、壁側の席にはすべてコンセントが1ケ所ごとに完備されている。まるで空港のラウンジのよう。

4:理科室。机はすべて可動式。

5&6:Interractive Learning Centerという図書室兼学習センター。ただ、写真5のように、団欒できる空間が満載。外には森が見え、いつまでもいたくなる。

7:美術室。プロジェクターが3台天釣りになっている。アナログとデジタルがうまく教室空間として融合している。

8:ダブルルームという教室。名前の通り、2つの教室がパーテションで区切られている。英語などでクラスを2つに分けるときに使うらしい。

9:今回サミットの全体会場になったホール。これもこの高校の設備の1つ。

10:普通の教室にはレンジや冷蔵庫もあった。

11:高校の入り口付近。このままランチルームとつながっている。実に開放的だ。

12:廊下の床はご覧の通りのカラフルさ。

13:入り口を外から見たところ。




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