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2007年02月02日
2007年02月04日
第八十九話:普通教室でのICT活用、なぜ日常化しないか(後編)
ICT活用の日常化を考える上で、活用効果を追究することは、当然ながら重要なことである。しかし、一方で、準備に手間がかっかたり使いにくい状況であると、日常的な活用にはつながらない。抵抗感を感じるような意識がなくなるようにすること(透明性)が重要である。特に情報担当リーダを中心に校内のICT環境整備などを考慮しないといけない。
透明性の追究1:手軽さ
手間をかけないちょっとした工夫のおすすめも必要だ。例えば、最近のプロジェクターは性能が良くなっているので、三脚のついたスクリーンを使う場所まで運ばなくても、壁があれば十分にそのままうつせる。黒板に写したっていい。「スクリーンも準備しなければならない」と思ったとたんに敬遠する教師もいる。
デジタルカメラだって、撮った画像をパソコンに入れなくても、テレビにはすぐ映せる。こういうことも知らないで、「パソコンにとりこまなくちゃならないなら使いたくない」と思い込んでいる教師もいるかもしれない。また、大きくすることの効果はデジタルだけではない。紙で大きくできるのであれば、掲示したり書き込んだりできるので、大判プリンタがあるのなら、これも活用したい。
透明性の追究2:いつも使える状態
たしかに、効果的ではあるICT機器も、準備等に大変な負荷がかかるなど、使いにくい環境にあっては何にもならない。たとえば、デジタルカメラはいつも使えるように充電されているだろうか。使い終わったクラスが充電するような、あるいは、使い終わった電池入れがあって後で担当が充電しておくような「システム」が確立していればすむことだ。また、各階に1台しかないプロジェクターはいちいちケーブルをつなぐのが面倒だという教師も少なくない。だったら、カートにひとまとりにしておいて、DVDデッキなどとつないだままにしておく。これだと、教室にひっぱってくるだけで、電源を入れるとすぐに使える。また、高学年だと、このような準備を係の子どもにしてもらうことも良いかもしれない。
透明性の追究3:軽重
学校によっては、よく使っている教師とあまり使っていない教師の差が明らかになってくることも少なくない。このような時に、わざと使っていない学年や学級のところに、数が限られている機器(プロジェクターなど)を常備させ、活用の活性化を促している学校がある。一方、限られている機器だからこそ、使っているところに常備させ、校内研究会や保護者会で状況を公開している学校もある。いずれのやり方が適しているかは、その学校の実情にもよるので、一概には言えないが、いずれにしても台数などが限られている場合は、より活性化するための工夫が必要であることは確かだ。
透明性の追究4:慣れ
どこに置いてあるかが重要である一方で当然のことながら、ICT機器等と子どもたちをどのようにかかわらせるのかというのは大きなポイントだ。例えば、電話やFAX。改築したある学校では職員室ではなく図書室にFAXが置いてある。使うときの敷居の低さという点ではこの効果ははかりしれない。しかしながら、まだ普通の学校ではFAXは職員室にあるだろう。置き場所は職員室でも、「どのように子どもたちとかかわらせるか」でだいぶ状況は変わってくる。また、子どもたちの使う頻度が増すと、故障する可能性も高くなる。しかし、使い方の指導は大切だがこれを言いすぎると、担任の教師は使わせにくくなる。「壊したら直せばいい」くらいの構えでいたいものだ。
いろいろと述べてきたが、情報担当リーダの役割は重い。具体的な授業場面で子どもたちの姿で効果を示す事は何よりも大事なことだし、日頃、使う安くしていくのもリーダの采配がものをいうことが多い。最後に述べた「慣れ」にしても、使いはじめのバイアスはいつしかとれて、どんどん効果が見えてくる事がある。活用の効果はともかく、ここまで使わせる辛抱が情報担当リーダには必要になってくる。
また、パソコン等のICT機器はできるだけ身近にあることが望ましい。 十分なコンピュータの台数がある学校はほとんど皆無だろう。それでも、 校内にあるコンピュータの一部を空きスペースや廊下などに配置し、わざわざコンピュータルームまで行かなくても子どもたちが 「ちょっと使える」 環境を保証している学校がある。 調べ活動などでは、
何も全員がコンピュータを使う場面だけではない。 使いたい子だけが使えれば良い。教科に関連するデジタル化教材もこのような身近な環境で活用するのがベターだと考える。
2007年02月16日
第九十話:パース1日目ーOcean Reef Snior High Schoolー
今週は、シンガポールを経て、パース(西オーストラリア州)に、メディアリテラシーの実践校の視察と、今後の自分の研究の資料集めに来ている。
9月に知り合ったJanさんにコーディネートしてもらい、一番ホットな学校をめぐる1週間だ。今日はまず、その第一弾で、公立の中高等学校を訪問した。
【学校規模】
90名の教師。1350名の生徒。ただ、敷地が広いので、そんなにたくさんいるような感じはしない。チャイム(?)が日本でいうと、防災訓練のサイレン。ちょっとはじめはびっくりする。
【科目】
必須は国語などほんの少しで、ほとんどの科目は選択授業だ。われわれが見せてもらったメディアスタディ(ICT活用に限らず、メディアリテラシーの授業を行う科目)も選択科目の1つだ。選択科目は25名が定員。
【Media Studyの授業】
22名が受講。Year12(高校2年生)。
まずは撮影の基本を学ぶ授業だった。撮影の基本とは、フレームをどうするか、一人だけが映っているときは肩から上を映すなどのきまりを、古典的な映画の映像を見せながら学習。
選択でYear8からメディアスタディを選択している生徒がほとんどであるが、はじめての生徒や学習内容を忘れている生徒が多いため、改めて基本から学習することにしたと言う。
この授業では、「メディアとは何か」「チームワーク」「メディアで使われる言葉」などを参加する(生徒自ら撮影してみる)ことで学ぶ。例えば、広告を見るだけでなく、「どうやって作られているか」「どんな道具を使っているのか」「どういうふうに影響を与えるのか」などについては、作らないとわからないという。このへんは、私も同感。読み取るだけではダメだと思う。
生徒は教師の説明を聞いた後、グループに分かれ、ビデオカメラを持って校内で撮影をした。教師は授業終了20分前に戻ってくるように伝達。普段の撮影時は撮影の様子を見て回る。撮影に対してアドバイスをする。
教室に戻ってきた生徒の作品を見て、教師はシートにコメント、及び評価をすぐに書く。その場で書いてあることが大事だと言っていた。
設備が整っていない中でどのように工夫するかということにビンセント先生は尽力している。公立でも設備な整っていなくても、ここまでできるということを示したいのだと思われる。
板書には、以下のように書いてあった。
Back to Basic Task(基本に立ち戻ろう)
FOCUS(注目点)
-common skils(ズーム禁止などの共通の技術)
-smooth transition(滑らかに移動)
-group organization(チームワーク)
-working with time constration(時間制約)
-media etiquette(メディアエチケット)
オーストラリア学校事情予備知識1
【学校種や年度】
西オーストラリアの学校は、7-3-2制である。
5才から入学、17才で高校最終学年になる。日本と比べると、1年早く入学し、1年早く高校を卒業することになる。
中学校1年生はYear8、高校最終学年はYear12。
オーストラリアは1月下旬〜2月上旬が新年度。
Year10までは義務教育。Year11からは仕事がある生徒は卒業できる。
2007年02月18日
第九十一話:パース訪問2日目ーMt Lawley Senior High Schoolー
今回のパース訪問では、2つの小学校、5つの中高等学校、1つの幼稚園から高等学校までの一貫校、1つの大学、1つの映画協会、そして2つの書店をまわる。タイトだが、JanとJulieが少しでも多くの関係箇所を訪問できるようにアレンジしてくれた結果だ。
訪問の2日目からMt Lawley Senior High Schoolを紹介する。ここも公立の中高等学校だが、どうやら1日目のOcean Reef Senior High Schoolよりは、予算のある地域のようだ。
1956年創立で音楽、語学をウリにしている学校だ。オーストラリアの場合は、何をウリにしているかと、特に中高等学校の場合は、強調する傾向にある。政府からたくさんの援助をもらっていて、40億で最近、新校舎が再建された。Year8/9(いわゆる中学校)と
Year10-12(いわゆる高等学校)は建物が分かれていて、中央に共有スペースがある。Year8/9とYear10-12では、大きく指導方針がちがうようだ。きちんと生活指導等に重点を置くために、Year8/9、ではチームワークで指導にあたっている。これに対し、Year10-12になると、興味関心がそれぞれでてくるので、教師はそれぞれに対応する授業方針を持っている。ちなみに、Year8/9のメディアの教科名は、そのものずばり「Media」。Year10-12では、これを「Media
Production and Analysis」とよぶ。行う内容もうかがい知れる。そういえば、Year10-12の必修は国語だけだそうだ。
なお、2年間で両方の教員が入れ替わり、中学校部分と高等学校部分をすべての教員が経験する。
Media Production and Analysisは、他の学校等同様に、選択授業の1つなので、この授業を選択している生徒は、メディア制作などがとても好きであるか、またはこの種類の上級学校に進学を予定しているものがほぼ選択してくるようだ。
TEEという高校卒業試験があり、昨年からここに高校のメディアの授業の学習成果を成績に考慮してくれるになったという。
この選択方式はとても良いと思う。興味のある生徒は徹底的にこの分野を選択できる。以下にも示すように、メディアの授業では、作ってみて考えるパターンが多い。これがとても重要であると思う。日本の教科情報もこのようなシステムになっているはずだが、なかなか時間をかけて制作する授業は多くないように思う。もっとも、日本の場合は必須であるが。
オーストラリアでは、中高等学校の場合、国語で約1/4にViewingが入っていて、制作まではいかないまでも、日本でいうメディアリテラシーの部分をここで学ぶことができる。ただ、どの程度までやりきっているかは、残念ながら学校(教師)によるようだ。
Year11の授業
授業内容はポップカルチャー研究。自分たちの好きな音楽や映像を鑑賞し、その後制作に入るようだ。ここでは、Googleを使用 していた。日本のOrangeRangeをピックアプしている生徒もいて、日本のグループもなかなかの人気らしい。
メディア担当のビル先生は、生徒が何か困ったことがあったらアドバイスをするというやり方を徹底している。ちなみに、ここで使われているメディアの教科書の筆者は、なんと今回お世話になっているJanとJulieだ!(写真右上)
毎回の授業で必ずラーニングジャーナルという活動記録兼評価表を提出させ、それで教師の評価している。
ホワイトボードに全て学年の生徒の指示が記入されている。
ちなみに、この学校でも使われているPCはMacだった。
西オーストラリア予備知識2
TAFEというMedia,Healthなど職業の専門学校などの試験がある。筆記試験はなく、面接とラーニングジャーナルやいままで作ったCG等のポートフォリオを提出すればよいそうだ。
ちなみに、オーストラリアの場合、大学進学は15%位である。
2007年02月19日
第九十二話:Mt Lawley Senior High Schoolの校舎
2007年02月20日
第九十三話:Churchlands Primary School
パース5日目の訪問校3校のうちから、Churchlands Primary Schoolをご紹介する。今回の訪問ではじめて国語の中でのメディアを位置づけた授業を見ることができた。
国語の担当は、Jennifer Kennedy先生。アワードもとったことのあるベテラン教師だ。クラスは30人であるが、Year6とYear7の混成クラスだ。Year6の人数が少ないためにとなりのクラスの同様の日本でいうところの複式になっている。
学年では割っているが、個々のレベルにあわせて、複数の課題を提示することが多いという。しかし、参観した授業については、同じテーマで行っていた。
必須である国語は毎日2コマ(1コマは原則40分)あるようだ。
参観した授業は、国語のViewingの授業。この小学校でも、国語の1/4の時間をかけてViewingを行っている。ちなみに、残りの3/4は、日本での国語に領域としては似ている。
授業のはじめに、記事の読み合わせを行ったようだ(残念ながら、間に合わなかったので、Jennifer Kennedy先生が説明してくださった)。
ドイツの女性がパラグライダー中に積乱雲(上昇気流)に巻き込まれ、上空まで上がってしまい、凍えてしまったが、無事生還できたという話の新聞記事を見せ、
「なぜこのような写真を使っているのか」「なぜこのような見出しなのか」などについて分析させた。
この手のことはどうやらショートスパンでViewingの時間に行っている。Viewingでは、毎回の積み重ねと、次に示す大(中)単元をうまく組み合わせているように思えた。
次に、1枚の写真(土曜日の地域新聞に載った写真:シアトル警察の警官が、路地で黒人の子どもに話しかけている場面)を配布して、この一枚の写真から想像したことをまず書き出させた。その後、3人グループで話の構成を練らせる作業に入った。構成を考えるにあたって、グループに1枚「ストーリーボード」とよばれる6−9カット分がかけるワークシートを配布。一人一人異なった想像の書き出しから話し合いで1つにまとめることに。まさにD-projectでいうところの「建設的妥協点」を見いだしながらの活動となる。このような協調性を育む活動をJennifer
Kennedy先生はとても大事にしているようだ。もっとも、なかなか時間がなくて、共同作業は大変のようだが。
最終的には、これをムービーに仕上げる。ただ、先に示した写真を6シーンのうちのどこかに入れるように教師が再度が確認。
内容からいくと、バイオレンス的な内容に流されがちな子どもたちだったが、「女の私が夫といっしょに行って楽しめるような内容にしてちょうだい」と、なかなか高度(?)な注文を子どもたちにつけていた。
このように、映像と言葉を何度も行き来させるような活動は、日本でも国語の学習内容として各学年で随所に扱っている教科書もある。ただ、系統的に組み入れられているとは言いがたく、つながりがまったく見えない場合が多い。しかし、現実には(日本の国語でも)このような内容が多く入ってきているわけなので、スパイラルにレベルアップしていく見通しを教科書や指導書で示す必要があると思う。
オーストラリアのように、国語の領域にViewingが位置づけられ、「話す・聞く」「書く」「読む」との関係を明確に示してあることが理想だとあらためて思った。
2007年02月21日
第九十四話:普段着のIT活用セミナー
平成19年3月21日(祝・水)13:00〜17:00に東京の内田洋行 東京ショールーム地下1階で表記のセミナーを開催する。西田実行委員長@柏以下、関東の実行委員メンバーががんばって計画をたてている。対象はICT活用初心者だが、校内の同僚にどのようにすすめていったら良いか悩んでいる人にもおすすめだ。
紹介文を載せておく。
「パソコンで授業をやると効果があるの?」「学校にプロジェクターがあるんだけど面倒じゃないの?」 こう思われたことはありませんか?また、このように校内で言われたことはありませんか?
本セミナーでは、普段着のICT活用のヒントがいっぱいもらえます。模擬授業をはじめ参加型のワークショップ、日ごろの悩みを解決するよろず相談コーナーなど、内容充実の半日です。また、アイディア満載のカンタン活用シートなどのおみやげもあります。
ぜひ、勢いでお越し下さい!
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